我々がマリネッラを訪れ、日本人女性スタッフの話を聞く。
前回も書いたが100年前から基本的なマーガレット柄の小紋タイのデザインは貫いており、毎月その柄を大きく変えることなく、色・柄を微妙に変更することで、新作を生み出していくということだった。
そのすべてにオーナーであるマリネッラ氏が目を通し、判断し、新作が出来上がっていくそうである。
世界クラスのネクタイメーカーながらネクタイづくりの基本である柄の選別をデザイナー任せにせずオーナー自らが責任をもってセレクトしているところにまずは感銘を受けた。
そして、おもてなしの心である。
われわれが女性スタッフの話を聞いていると、ショールームの中のテーブルにはエスプレッソとナポリの名物焼き菓子スフォリアテッラが並べられる。
給仕していたのはマリネッラの方ではなく近隣のカフェの方…
重要な来客でもあるのかと思いきや、女性スタッフがそちらの部屋に我々を案内してくれる。
そしてオーナー自らお菓子の説明とどうやって食べれば飲めば美味しいかをを説明してくれる。
もちろんイタリア語なので女性のスタッフが通訳をしてくれる。
ちなみにスフォリアテッラとは巻貝のような形をしたパイである。
中にはチーズやカスタードクリーム、アーモンドクリームなどが入っており、表面はパリパリと少し硬めの歯ごたえのナポリの名物の焼き菓子である。
確かにご紹介をいただきうかがったものの、われわれは商社でもなくいわば小売店の店主のあつまりである。
そんなわれわれに気持ちよく振舞っていただいたマリネッラ氏の下心の見えないスマートさに感動したのである。
ところが、マリネッラ氏のおもてなしの心はこんなうわべだけの事ではなかったのである。
つづく